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大阪家庭裁判所 平成5年(少)2694号 決定

少年 TことO・E子(昭和50.11.23生)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

検察官作成の平成5年6月11日付け送致書記載の犯罪事実のとおり

(法令の適用)

覚せい剤取締法41条の2第1項

(処遇の理由)

1  少年の父母は、少年が小学2年生のころ離婚し、以後、少年は、妹とともに母の元で成育したが、父とも母には内緒で食事をするなどして交流を保っていたところ、少年が中学1年生になったころ、父が23歳の女性と再婚して、少年はショックを受けた。少年は、中学に入ると、同学年の不良女子と交遊するようになり、母の言うことを聞かずに、深夜徘徊やシンナーの吸引を始め、暴走族とともに無免許で原動機付自転車を運転したりもした。少年は、平成3年4月、高校に進学したが、数か月で中退し、以後アルバイト先を転々と変えつつ、同4年10月から3か月間ほど、異母弟、異母妹が生まれた父を困らせようと、父宅に強引に居候して、父の目の前でシンナーを吸引してみせたりした。さらに少年は、同5年1月、女性友達とともに、知合いの暴力団関係者である男性から興味本位で覚せい剤を打ってもらったのを契機に使用を重ね、その後1か月間ほど中断したものの、夜遊びをしているときに同人から勧められて使用を再関し、さらに同人を通じて知り合った他の売人からも覚せい剤を譲り受けるなどして使用を続けていたところ、家出した前記女性友達に付き合って売人らとともに大阪市天王寺区内のホテルへ宿泊している最中に、偶発的な事情から、売人の連れの1人に対し、所持していた覚せい剤を無償で譲渡したのが本件である。

2  以上によれば、少年は、もともとシンナー吸引、暴走など不良的な素行に親しみやすい性向を持っていることが窺えるが、それも、父に対する甘えと反発の間で揺れる思春期の複雑な感情の捌け口であったという面が見受けられ、さらに、就労が安定せず生活態度の乱れが続いたという事情も加わって、興味と薬理効果に惹かれるまま覚せい剤を使用するに至ったものと推認される。覚せい剤の使用回数は少なくとも20回以上という相当数に及び、一旦は使用を中断しようとしたものの長続きしなかったという経緯をも考慮すれば、少年の要保護性は収容保護を必要とする段階に至っているというべきである。しかし他方、少年の母が従来勤めていたスナックを退職し、母方の親戚が経営する企業で少年とともに働くことにするなど母の監護意欲が高いこと、少年自身、母の意向に従って就労し、自分の生活を立て直す意欲をみせていること、少年の父に対する複雑な想いを整理させるためにも、就労を通じて広く健全な社会への目を開かせる必要があると思われることなどの諸点に照らすと、少年の効果的な更生を図るためには特修短期処遇が相当であると考えるので、その旨勧告することとする。

以上の理由により、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 野原利幸)

(送致書記載の犯罪事実)〈抄録〉

被疑者は、平成5年5月24日ころ、大阪市天王寺区○○町×番××号所在のホテル「○○」305号室において、Aに対し、フェニルメチルアミノプロパン塩類を含有する覚せい剤を1.804グラムを無償で譲渡し、もって、みだりに覚せい剤を譲り渡したものである。

〔参考1〕 処遇勧告書〈省略〉

〔参考2〕 少年調査票〈省略〉

〔参考3〕 鑑別結果通知書〈省略〉

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